『………』
カメラを受け取るや否や食い入るように
写真を凝視する夏に「何か言ってよ…」と思いのほか弱気な声が出た。
だって、本当。何か言ってくれないと
不安になる。だから、ねえ…。
「なつ…」
『…イイね、これ』
彼は、初めて私に名前を呼ばれた時の
ようにそれはそれは満足そうに、笑った。
『悠の“すべて”に入れた』
———写真は、私のすべてだから。
それは、1週間前、私が夏に言った言葉。
「なん…で」
『?』
「なんでそんなに嬉しそうにするの?」
『なんで、って』
『嬉しいから』
どくん、と胸が高鳴って。
「(あ…、また。撮りたくなった)」
たった、一言。それだけで伝わる想いも
あるのだと、この時初めて知った。