一瞬の出来事すぎて呆然としている私を
よそに悪戯な笑みを残して離れた夏。
『はい、離れた。写真見せて』
「…………は?」
『は?じゃなくて写真ー』
「何、今の。なんでキス」
夏の言葉を遮ったせいか少しだけ
ムッとした表情をされた。
でも、そんなことは私にとっては
どうでもいい。
浮かんだ疑問を素直にぶつければ
なぜが得意気に微笑まれて。
『しない、とは言ってないデショ?』
「…、」
『ほら、約束。写真見せて』
こういう奴だった、夏は。
もう、何か言うのも面倒になった私は
無言でカメラを渡した。
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