「……、夏」

『なに』

「…離して」


恥ずかしいから、とは言わないけど。


『ふーん』


ほら、この悪戯心を細微に孕ませた
笑い方。私の反応を見て楽しんでる。


「…何かしたら殴るよ」

『何かって、なに?』


にやりと口を歪ませながらもグッと
抱き締める力を強めた夏を睨む。


「殴る」

『カメラ持ってるじゃん』

「カメラで、殴る」

『ばーか』


まあ、カメラで殴るなんて嘘だけど。
でも今の「ばーか」は腹が立つ。


「早く、離して」

『ねえ悠』

「…なに」

『離してあげるからさ、さっきの写真
見せてよ』

「……本当に離してね」

『離すってば』

「…じゃあ、見せてあげ…っ、!」


言葉は唇に触れたぬくもりによって
最後まで言うことはできなかった。