あたしは、体育館の裏の空き地に呼び出された。

「ごめん、オレたち、別れよう。」

ワカレヨウ。あたしはその言葉に動揺しなかった。

なんとなく、分かってた。

別れるってこと。

だけど、その言葉で深くあたしの心が傷付かなかった。

理由は、分かってるんだ…………

「別れよう…?」

「うん……」

ほぼ即答。

カレは、傷付いたような顔であたしを見つめた。

だけど、それを振り切るように、後ろを向いた。

「じゃ、バイバイ。」

そう、一言残してカレは一度も振り返ることなく立ち去った。

…今度の恋は、本物だと思った。

自分から片思いして、胸が熱くなるような想いをしたはず……だった。

だけど、カレから”ワカレヨウ”って言われても、何も感じなかったんだ。

あたし、こと櫻木葵依は、本気の恋をしたことがない。

気になる男。

もちろん、いるよ。

だけど、本気でしたか?って聞かれると、うんって首を縦に振ることができない。

あたしだって、本気の恋がしたい。

見ているだけで、胸が熱くなって、ドキドキして、切なくて、いっぱい泣いて……

中学に入ってからは、本気で恋してるつもりだった。

さっき別れたカレとは、同中でその間の3年間、ずっと付き合ってた。

同じ部活で、練習にも一生懸命で、誠実で、優しくて…そんな彼が気になって…

それから、自分から積極的に話すようになって……

告白、付き合う……

楽しい毎日だったのに、いつから心がすれ違うようになったのかな?

今日は高1の初日。

高校からは、心機一転で、頑張ろう!

あたしの目標は、高校の間で、本気の恋を見つけて、その恋に向かって、ひたむきになること!!

かっこよくて、優しくて……

そして、何よりあたしを本気にしてくれるダーリンが、あたしの目の前に現れますように……