「驚いた顔をしているな。まあ無理もない。お忍びだったんだからな」


王様は私を抱きしめたまま話し出す。


「君を見かけたのは城下町でなんだ」


『沙耶はもともと城下町が好きでね。よくお忍びで下りていたんだ』

おじさんが言ってた。

その時に王様は沙耶姫に会っていた。


そういうことね?


「ええ、城下町でよく遊んでいました。でもその時に会っていただなんて…」


「そうだったのか。あの後何度も町へ下りてみたが見つからなくてね」


そう言って苦笑いをしてみせる。


「諦めかけていた時に、隣の国の姫のことを知ったんだよ」


抱きしめる力が強くなる。