「お、おう……」
「マーガレットがケーキを食べさせたかったのは、わたしじゃなくてお前だろう。お前に直接渡せないから、わざわざわたしを経由したんだぞ。きちんと礼を言え」
「そ、そうだな」

 叱られてしゅんとしていたウィルは、気を取り直して立ち去る。彼の行き先は、むろん角の本屋だ。

「リオネル!」

 エディは容赦しなかった。次にもう一人の騎士団員を呼びつける。

「リリーをスイーツの食べ歩きに連れ回したそうだな?」
「食べるのが好きだって言ってたから」
「この、大馬鹿者!」

 エディの雷が落ちる。思わずリオネルは首を縮めた。

「彼女は甘い物はあまり好きじゃないんだ。連れて行くなら、肉が美味い店にしろ。言っておくが――」

 リオネルの目の前で、警告するかのようにエディは指を振る。

「彼女はものすごいグルメかつ健康な胃の持ち主だ。あの細い身体で三人前は食べる。まあ、お前の前なら多少遠慮するかもしれんが、財布の中身は十分に持って行け」
「……つ、次の給料日後に!」

 リオネルは思わず背筋を伸ばした。