「それはだめだ! 皆の迷惑になる!」

 おとなしく座っていたエディの声がふいに響いた。その場にいた全員が、思わず動きをとめる。今、まさに殴りあおうとしていた二人までも。

 その場をおさめようとオーウェンが腰を浮かせかけた時、カップを置いたエディが二人にしなやかな仕草で近づいた。

「頭を冷やして来てください!」

 エディは、リオネルとブライの首の後ろに手をやった。そして、二人をずるずると引きずっていく。

「ちょ――マテ!」
「わかった! おとなしくするから!」

 リオネルとブライの懇願もエディの耳には届いていないようだ。
 常人よりはるかに鍛えられている騎士団員たちを軽々と扉のところまで引きずっていき、ひょいと扉の外に放り出した。

 ぴしゃりと扉をしめて、エディは静かになった室内を見回す。
 
 しん、と静まり返った室内にいた皆はエディの力に驚いていた。見た目はこんなに細いというのに。エディはその視線に込められた意味に気づく様子もなく、静かに室内を見回す。

「……何か問題でも?」
「いや」

 オーウェンは笑うと、エディを手招きした。