「オーウェン、貴様!」

 どうせなら、女装の見習いじゃなくエディをエスコートする役は自分がやりたい――思うところは同じである。

「役得だ、役得」

 得意げなオーウェンを騎士団員たちが取り囲む。

「とりあえず、全員集合、こいつをしばくぞ! 囲め囲め!」
「お前らっ! 俺一応団長だぞっ! ちったぁ遠慮しろっ!」

 ファーレス騎士団は、今日も平和なのである。

◇◆◇◆◇

 そんなこんなで満月の夜となった。

「おい、本当にこれで大丈夫なのか? どう考えたって大きすぎだろう!」

 青いドレスに身を包んだエディは美しかった。すれ違った騎士団員たちが全員二度見したほどである。

 あれから二週間。ファーレス騎士団にはウィルクス家から侍女、というかエディが子どもの頃世話をしていたという乳母が派遣されてきた。

 この乳母が実に行儀作法にうるさくて、レディとしての作法を忘れ去ったエディと見習いたちは二週間にわたってみっちりと仕込まれた。