引っ越しの日。


冬馬くんには
何も伝えず出ていくことを
心に決めていた。


会うと泣いてしまうから。


きっとお母さんが
伝えてくれているだろう。



「そろそろ行こか。」



「…。」




冬馬くんとの思い出が詰まった
ピンクの自転車を荷台に積み込み、
ゆっくりと車は動き出した。



(…ばいばい)











「んー」

いつの間にか眠っていた。


「そろそろつくよー」



私たちがこれから暮らすことになる町は
ちょっと田舎で桜の木がよく似合う
きれいな場所だった。