授業中もご飯中も、カルロからの視線を感じていて、終始落ち着かなかった。


落ち着かない原因はもう一つある。


隆輝の不機嫌なオーラ。


私が噛み付いた首には大きな絆創膏が貼られていて、その事についても文句が言いたそうだ。



「ねぇ、葵」



放課後帰り支度をしていたら、カルロに声をかけられた。



「何?」

「今から時間ある?」

「今から? うん、大丈夫だよ」



私がそう言うと、カルロは目を輝かせた。


こういう所は凄く可愛いなって思う。


つい笑みが零れてしまう。



「色々街を見て回りたいんだけど、付き合ってくれない?」



ソローっと隆輝に視線を向けると、何も気にしていない様子だった。



「リュー、いいよね?」

「馴れ馴れしいんだよ。 勝手にしろ」

「そうするよ」



仏頂面の隆輝に笑って返すカルロ。


まさに怖いもの知らず。


隆輝は私とは目も合わせないまま教室を出て行ってしまった。


胸が苦しい……。



「どうなっても知らないわよ」



橘さんは呆れた様に、だけどどこか苛ついているかの様な口調でそう吐き捨てると、直ぐに帰ってしまった。


芽衣もいつもの様に笑顔で帰っていき、私とカルロは二人一緒に教室を後にした。