一時間目が終わり、教室に戻ると既に隆輝は席に座っていた。


めちゃくちゃ不機嫌な顔をして。


なによ……私の方が怒ってるんだから。



「一時間目のノート、後でコピーしますね」



席に座ると芽衣が笑ってそう言ってくれた。


なんて優しい子なの!?


今胸がジーン……としちゃった。



「ありがとう。 助かる」

「たいした事ではありませんわ。 それよりどちらに行かれてましたの?」

「あー……えーっと……」



チラッと隆輝に目をやると、完璧知らんぷりって顔してる。


あんたが連れ出したんだからあんたがなんか言いなさいよ!!


って言いたいけど、言えるわけもなく「保健室で寝てた……」なんていうベタな理由しか出てこなかった。



「具合悪いの?」



カルロに心配そうに顔を覗かれ、引きつった笑が零れた。


カルロが立ち上がり、影が落ちたと思ったら、おデコに柔らかい感触がした。


おデコにキスされてる……?



「お前何してんだよ!!」

「熱はないみたいだね」

「へ……!?」



隆輝の荒げた声を見事に無視して、カルロは穏やかに微笑んだ。



「小さい頃は具合が悪いと、両親がこうやって熱があるかどうか診てくれたんだ」

「ね、熱?」

「唇が一番体温を感じやすいんだって」



そっか、熱……うん、そうだよね……。


私ってば何ドキマギしてんだろ。


これはカルロにとっては普通の事。


何も意識する様な事なんてないんだから。