唇が離れると体から力が抜けて、へたり込んでしまった。


しゃがみ込んだ隆輝に顔を覗き込まれ、私は顔を逸らした。



「俺を見ろ」

「…………」

「聞いてんのか? 見ろよ」

「ヤ、ヤダっ」



こんな顔見せられるわけないじゃん!!


っ……!


顎を掴まれ、顔を持ち上げられた。


熱を帯びた隆輝の瞳。


逸らしたいのに反らせない……。



「余所見してんな」

「ど、いう……意味?」

「そのくらい自分で考えろ」



余所見って何!?


全然意味わかんないんだけど……。



「だいたいお前何考えてんの?」

「今は特に何も……」

「バカか、そんな事聞いてねぇよ」



は?


さっきからわけわかんない。


首を傾げると、隆輝は思いっきり眉間に皺を寄せた。


彼女に向かってガンたれないでもらいたい。


こういうところはとても御曹司とは思えない。



「な、何っ!?」



襟元をグイッと掴まれ、ヤバそうな雰囲気を感じて抵抗した。



「じっとしてろ」



してられるか!!



「あんたこそ何考えてんのよ!!」

「今教えてやるよ」

「はっ、え!? り、りゅりゅ隆輝!?」



隆輝の顔が近付き、鎖骨あたりにチクっとした痛みがした。