「・・・。」

「1点差。」

「知ってるよ!まだ勝ってるからいーし。」

言っている事とは裏腹に全然余裕そうに見えないサユの顔。

点差では負けている俺ら。
でも、この流れで言うと優位なのは断然俺たちだった。

「調子、乗らせてもらうから。」

わざとサユを煽る様に意地の悪い笑みを浮かべてサユを抜かして走った。


「・・・っ!負けるかバーカ!!」

ビュン。と風を切る音と共にサユが俺を抜かしていった。

「は、速い女・・・。」

呆れながら、ふと気づく。
サユのわずかな変化。

咽から聞こえる風音・・・。


「ケン!一回休憩ー!!サユ、喘息!」

走っていた足を止め少し離れた所でボールを取り合っているケンに声をかける。


「はっ?!何言ってんだよ!」

隠してるつもりだったのだろうか、何食わぬ顔で平静を装うサユ。


「・・・きゅーけー!!」

ケンが取り合いになっていたサッカーボールを持ち上げてそう叫んだ。

「だから、あたしは大丈夫だってば!」

「駄目。休憩。」

ケンに詰め寄るサユだったけど、ケンに呆気なく返されて黙ってしまった。

・・・ったく、何で強がるんだろ。
こいつは本当、そこら辺にいる女と全然違うから余計分からない。
まぁ、女なんて思った事ないけど。

でも、強がったり負けず嫌いなこいつの本心が俺には分からなかった。