「3-0。」
いつの間にか俺の背後にいた三郷が呟く。
「3-0、3-0、3-0・・・。」
「・・・悪かった!分かったから何回も繰り返すな!!怖いんだっつの。」
あんな大口叩いといてすぐに点取られれば、まぁ、恥ずかしいとか、三郷やヒサになんか言われてもしょうがない、と思う。
「この、役立たず!何の為にサッカー習ってんだよ!」
ヒサが俺の胸ぐらを掴みながら喧嘩越しに言ってきた。
俺より背は低いけど、十分迫力のあるヒサ。
「悪かったって。」
両手上げ、降参の意を示すとヒサは一回睨んでから手を離した。
俺達の中でサッカーを習ってるのは俺とケンだけ。
だから同じチームになる事はない。
"不公平"になるらしいから。
「ケンとサユと同じチームだと動かなくても点入るから楽だな~。」
呑気な事を言って俺の隣にきたのはサトだった。
「嫌味かよサト。」
「まさか。ハルも上手いじゃん。」
少し体系が丸いサトは動くのは好きだけどすぐ疲れるって奴。
「あいつは女じゃねーな。」
並みの男よりも明らかに運動神経がいいサユ。
本名、サユリ。正真正銘の女なわけで。
なぜか俺達男の集団の中にいつの間にか居座っていた女。
「ケンと組んだサユ、止められるのはぎりぎりでハルくらいだろうね。」
三郷だってユウだってそれなりに上手いんだ。
でも、無理。
軽い身のこなしでボールを操って抜いていくあいつは女の姿した男だ。
女に見えるのはナリだけ。
口から出る言葉も行動も全てが男と同じ。
いや、そこらへんの男よりも男らしい、といえるだろう。
時刻は黄昏時。
それでも、ボールを追いかける俺達、ガキ。