「遅ぇ!おまえ何ボーっとしてんだよ!」
ヒサ達集団、所謂ボールの"取り合い中"な今この瞬間。
俺がつくなりまた怒鳴られた。
「本当、遅すぎ。」
俺よりも数歩早く取り合いに混ざった三郷もヒサに便乗して俺に毒づく。
ボールは取り合いになり、集団の輪の中でくるくると渡っている。
「1点、」
ひょい、とその輪の中に飛び込んでボールを奪う。
「入れれば文句はねーだろ?」
まずはこの集団を突破、そしてゴールへダッシュ。
振り下ろした右足で蹴ったボールが上手くネットを揺らしてくれればいい。
けど、俺は忘れてた。
「あまーい!!」
この、二人の存在に。
「あたしら抜かそうなんて百万年早いっつの!」
いきなり現れ立ち塞がった二人。
「今日も邪魔すんのかよ、ケン。」
「当たり前だろ。」
「ケンばっかじゃねーっての!あたしもいんだろ~がっ!」
横からのスライディングで奪われたボール。
「あ、サユ!!返せ!」
「ケン~ほら、パス♪」
一気に俺を置いて両サイドに分かれて走り出す二人。
「・・・待てっつの!」
ボールめがけて走り出す。
同じようにヒサと三郷も。
構えるユウ。
「あいてるんだよ、ここ~っと!」
バシュ。
力強く蹴られたボールはまたも、ユウを越してネットを揺らした。
「ナイスパス、ケン♪」
「ナイスゴール♪」
二人はそう言い合うとハイタッチした。
乾いた音で空き地に響く。
ケンとサユ。
この二人は俺達の中じゃ最強のコンビ、だ。