「…ったく、本当ムカつく。」
サユが見えなくなるまでヒサは叫ぶと、少しスッキリしたようにその場にドカッと座り込んだ。
「おまえら本当仲良いな。」
「誰と誰が?」
「だから、おまえとサユ。」
「…地獄行くか?ハル。」
褒めたつもりが仇となったみたいだった。
「でも、ヒサは女の子好きじゃん。」
一番ドア側にいるサトが真二とカードゲームをしながら言った。
「好きだよ。でも、あいつは例外。第一、女なんて思った事一度もないっつの!!」
確かに、ヒサは俺達の中じゃ一番女には優しい。
まぁ、ただ単に好きだってのもあるけど、ヒサはもてるから女子とは仲が良くて…
考えてみれば、学校の女子とサユに対する扱いは全然違う、かも。
「ま、あいつは女の姿した男だもんな。」
俺だって、サユを女と見た事はない。
俺の場合は女自体が苦手だから、普段だってあんまり話さない。
けどサユは見た目は女だけど中身は男な奴だから、話せるわけだし…
「本人も自分の事、男だと思ってるよ。きっと。」
サトが何か分かった風な口調で言うから、少し引っ掛かった。
「どーゆう事だ?」
「ったく~だからな、自分で男って思ってなきゃあんな行動、出来るわけねーだろ?!」
ため息を一つわざとらしくついてから、ヒサは一気に言った。
「蹴っ飛ばしたり、殴ったり、大口で物食ったり、男に混ざって遊んだり、大体なぁ!!服めくられて腹の肉掴まれたら、普通の女の反応は『キャ!やめてよ!!』とかだろうが!!あいつは全ッ然、自分の事女だって思ってねーんだよ!な、サトこうゆう事だろ?!」
「まぁ~そうゆう事にしておく~。」
ヒサの気迫に負けながら、サトは面倒そうに答えた。
「だから、あいつは男だ!」
握りこぶしを作って断言するヒサに否定の声をあげる奴は誰もいなかった。