「うっ……ごめ…んな…っ……さい。」
「帝…。」
親父は、あたしの頭の上に片手をおいて顔をのぞき込んできた。
「…嫌。許すわけがない。絶対に許さない。…二度とあたしの前に現れないで。」
「っ…ごめんなさい。」
母親は土下座をしたが、あたしは許すつもりは一切なかった。
それから、母親は九州へとばされ、二度とあたしの目の前に現れなくなった…。
親父は、すぐにあの女と離婚した。
そして、美和さんと出会い再婚したのだ。
「…み……どっ!!」
「み…か……!!」
「帝!!」
ハッ!!!!
ビクリと肩が上がった。
目の前には美和さんが居て、さっきの景色と何の変化もない中庭だった。
「また、思い出してたの?」
「…。」
少し、自分の世界に入ってしまっていた。
ギュッ
「………ごめんね。」
「何で美和さんが謝るんですか?」
「だって…」
美和さんに謝られる理由がない。
本当にこの人はお人好しだ…。
「謝らないでください。美和さんは何も悪くない。」
「あたしが、もっと早くあなたと出会えてたら…。……帝。あたしを頼ってね?話聞くことくらいはできるから…。」
美和さんは、しっかりあたしの目を見て言ってくれた。
「はい。ありがとうございます。」
あたしは、美和さんにむかって、にっこりと笑った。
さて、帰ろうかな。
そう思ったときだった。
美和さんが爆弾発言をしたのだ。
「帝ー。泊まって行ったら?」
……えっ。
本家に泊まるの……?
…無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理。
…マジであの親父の相手はもう勘弁だ。
でも…
美和さんの目が怖い。
「…え?いや…あたし学校あるし。」
「いいじゃない。ここから送って行かせるわよ。」
…美和さん、絶対泊まらせる気だ。
そんなところに…
「帝ーー!!探したぞー!!」
……はぁ。
何でこのタイミングで来るわけ?
「あ。覇夜堵さん。帝に泊まってほしいんだけど、いい?」
「あぁ。勿論だ。帝、泊まってけ。組長命令だ。」
…美和さん。
許可を得る相手、間違ってますよ。
もっと、まともな奴に聞かないと。
親父に聞いたら、当たり前のようにOKだすから。
それに、組長命令ってなんだよ。
あたしは、初耳だぞ。
しかも、こんな時だけ自分の権力使いやがって。
「嫌。」
「“組長命令だ”と言ったが?若頭から、おとしてやってもいいんだけどなぁ〜。」
…現在、神条組には若頭が2人いる。
苓士とあたし。
この地位を使って脅してきやがった。