「…またな。」


…麗都が言った!!

しかも、いつの間に起きたんだ?


「じゃあな。」


「嘉恋ちゃーん。また明日絶対会おうなぁ!!俺っちも」


「…長い。もういい。明日ね。はいはい。じゃあね。」



倉庫の部屋から出ると、煌大は既にバイクに跨がっていた。



「遅ぇ。」


「…。そう?」


「いいから乗れ。」


「…。」



何。この態度。

地味にムカつく。



煌大からヘルメットを受けとり、バイクに乗った。






ヘルメットを着けていると、煌大が振り向いてきた。


「慣れてるな?」


「…。気のせいでしょ。」


「…。」




カチャ




あたしがヘルメットを着けるのに試行錯誤していたら、煌大がつけてくれた。



「行くぞ。」


「…うん。」



煌大の腕があたしの手首を掴み、自分の腰に回した。




ヴォン!!




バイクが動き出した。





運転している煌大に出来るだけ耳元で話しかける。



「次の信号、左。そしたら、右側にあるマンション。」



「わかった。」


家を教えてしまったが…。



うん…。


どうせ、“双葉嘉恋”の時だけの家だしいいか。



…煌大の運転は見事に信号無視。


だから、すぐに家に着いた。



「着いた。」


「…わざわざありがとう。」



ヘルメットを外して、煌大に返した。



そしたら、そのとき





クシャッ




煌大があたしの頭をクシャッと撫でた。


「またな、嘉恋。」




そう言うと、バイクの騒音を響かせながら去っていった。






金髪に黒のパーカを羽織り、フードを被った女。



右耳にはたくさんピアスがついている。


左耳には何もついていない。



十字架のネックレス。






この女は、祥獣の縄張りでは最近有名な女だった。




通称“冷姫”



凄く冷たいが誰もが振り返り、彼女を見てしまうほどの美しさを持っている。




まるで、姫のよう。







彼女の名は







神条 帝









今日も彼女は現れた。
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「お姉さん、暇でしょ?俺等と遊ぼーぜ?」


「俺等、うまいぜ?」


ニヤニヤと笑いながら、近寄ってくる。



「悪いけど、そんな時間ない。」



ドカッ


バキッ



回し蹴りと鳩尾に重い一発。


「うっ…。っく…っそぉぉぉ!!」


「…。」


倒れている男たち…。


まぁ、いいか。


しーらね。







「煩い。黙れよ。」



もう一発蹴りを。



…というか


20時45分に来いって言われたんだよなぁ。




そろそろ向かったほうがいいだろうか。







―約10分前




1本の電話がかかってきた。



“はい”


“帝?暇だったらちょい面貸せよ”


“暇じゃない”


“えぇ〜!!そこをなんとか頼む〜!!俺、暇すぎて死んでしまう〜”



…よくそんなんで店、続いてるな。



“…しゃあないな”


“やったー!!じゃあ、45分に来て”


あたしは、ここで電話を切った。


…暇すぎて死ぬ奴なんかいないと思う。




…ということだ。






カツカツカツ…



しばらく歩いて見えてきた怪しいバー。



カランカラン



「待ってたよ、帝。」


店内に入り、カウンター席に座る。


「急に何だよ。」


「久しぶりじゃねぇか?いつぶりだ?」




…見事にあたしの質問スルー。


まるで、聞こえてなかったかのように。



「…さぁ?店にはあんまり来てなかったからな。」


「だよなー。」




この男、バーの店長

不破 大雅 Fuwa.Taiga

現在22歳

あたしより5歳年上








「…この後、予定入ってる。」


「クスッ。だから、早く用件言えということですね?神条組若頭帝様?」


…ムカつく。


けど

当たってる。



「…そう。解ってんなら早く。」


「はいはい。わかったよ。ちょっと待ってて。」



大雅は、あたしに酒を注いで店の奥へと入って行った。




…相変わらず、あたし意外の客は0。


いつも、来るときはだいたい他に客は居ない。




経営のほうは、大丈夫なのだろうか…。