ヤツがちらりと私を見下ろした。

「いや、生徒会が一緒だった」

「―――――――――ああ!」

 思わず声を上げて片手をパチンと鳴らしたところで、美女同士の挨拶は終ったらしい。

 黒い絹製で露出激しいワンピーススーツに身を包んだ、渡瀬百合その人が、美しくラインを引いた瞳をひたっとヤツにつけた。

 身長は結構低めなのに、オーラか何かが出ているようでやたらと大きく見えるのだ。つい仰け反る。

「漆原君」

 声を掛けられて、ヤツは皿から目を上げた。

「うん」

「ちゃんと来たのね。それはいいことだわ。実のところ、あなたは来ないかと思ってたの」

 私の隣でヤツは返事をせずに視線を外して、またサンドイッチを頬張る。態度が悪いぞ。

 彼女は片眉をゆっくりと上げて、ダレ男の全身を眺め回した。

「あ、懐かしいわ~」

 奈緒が完全に他人事でそう言った。

 私は巻き込まれる前にと、皿を持ったまま、そろそろ壁伝いに移動を開始する。

 渡瀬百合、山の上学園第83代生徒会副会長。彼女の高校時代のあだ名は「ダイナマイト渡瀬」だった。高校生とは思えない豊満なボディーを制服に無理やり詰め込んで、腰を振って歩く姿は有名だった。