ムカついた私が皿を取り上げようとすると、それをヒョイと高く持ち上げてしまった。ヤツは180センチを越える長身なのだ。届かない・・・。私は忌々しげにそれを睨みつける。

 低く唸っている私をちょっと面白そうな顔で見ていたけど、ふと視線を私の後ろに飛ばした彼が固まった。

「え?」

 漆原大地が固まることなどあるのか!?そう思って。

 私が驚くと同時に後ろからしっとりとした声が聞こえた。そして、突然辺りに漂いだすいい香り。

 ふわりと薔薇の香りに包まれて、私は何度か瞬きを繰り返す。

「漆原君、ここにいたのね。うまくスピーチから逃げ出したようだけど、それで終わりじゃあないわよ」


 ――――――――はい?


 私はくるりと振り返った。

 そして、目を見開いて静止してしまった。

 だって。

 だって、目の前には超ゴージャスな美女が!!

 ・・・・・えーと、やたらと露出の激しい格好で、立ってらっしゃったのだ。

 あ、思わず敬語になっちゃったわ。

「あら、渡瀬さん。相変わらず綺麗ねえ~」

 私の隣で奈緒が、あははは!とあけすけに笑っている。