「はぁ・・はぁ・・はぁ・・」

お化け屋敷から無事に生還した私は近くのベンチに座り込んだ。

「大丈夫か?沙羅・・・」

私の顔を覗きこんだ東吾をキッと睨んだ。

「大丈夫じゃないわよ!」
「・・・元気そうで良かったわ・・・」

東吾は、目線を逸らせてぼそっと呟いて私の隣に座った。

「ごめん・・・沙羅がそんなにお化け苦手やとは思わんかった・・まさか入った瞬間・・・」
「もうその話はしないで!」

東吾の言葉を遮ってそう叫んだ。
思い出すだけで怖いやら・・・恥ずかしいやら・・・。
私はお化け屋敷の真っ暗な空間に足を踏み入れた瞬間パニックに陥ってしまい、東吾の手を振り払って走り出してしまったのだ。

「いや~~~~!!出口!出口どこよ!!!」
「沙羅!待って、沙羅っ!!」

後ろで東吾が私の名前を呼んだ気がしたけど、私はとにかくここから出たい一心で出口めがけて走っていた。
もちろん何も見ないように目を瞑って。
思えば、そんな状態で出口にたどり着いたのは奇跡に近い気がする。
途中、何度か何かにぶつかった気がするけど、それを確認する勇気はなくとりあえず当たったものは突き飛ばして走り去った。

出口の明かりが見えた瞬間は涙が出そうになったわよ・・・・。




ぐったりとしている私に、東吾はすまなそうにジュースを手渡してくれた。

「・・・ありがとう」

無理に連れて行かれた事に腹を立てていたけど、こうして気遣ってくれるのは正直嬉しい。
少しだけ機嫌を直してジュースに口をつけた。

「ごめんな、沙羅・・・。まだ気分悪い?」

しゅんと肩を落とし、心配そうに私の顔を覗きこむ東吾を見たら、なんだかお化け屋敷の事はどうでも良くなってきた。
東吾との時間・・・楽しまなきゃ!
私はぐっと顔をあげて東吾に言った。

「さ、次はジェットコースター行くわよ!」
「え?沙羅、もう大丈夫なん?」
「大丈夫じゃないからジェットコースターなの!」

私の答えに東吾はぷっと吹き出した。

「沙羅らしいわ!ほな、2回でも3回でも付き合うで」

そうして私たちは手を取り合ってジェットコースター目指して駆け出した。