しばらくそうしてお互いを抱きしめあって、東吾がそっと腕の力を緩め私の顔を見ながら言った。

「でも、俺はまたすぐ向こうへ戻らなあかん」
「うん・・・分かってる」

そう答えた私に、東吾は切なそうな眼をした。
そして私の髪を撫でながら話した。

「今すぐお前に確かな約束をやれる程、俺は大人やない。せやけど2年待っててくれへんか?」
「2年?」

首を傾げた私に東吾は少し緊張した様な硬くなった声で言った。

「2年経ったら俺、18になるから。それまでにプロになって、18歳の俺の誕生日に沙羅迎えに来るから。そやから・・・待っててくれへんか」


「とう・・ご・・・」

私はもうぼろぼろ涙が出てきて上手く話せない状態だった。

「なん・・か・・・それって・・・・プロポーズ・・・みたいじゃん・・・!」

ようやくそう言った私を、東吾は再びぎゅっと抱きしめて言った。

「アホ。『みたい』やなくてプロポーズや」
「うっ・・・とう・・ごぅ・・・」

もう私は嗚咽を漏らしてしまうほど泣いてしまっていた。
そんな私を落ち着かせるように、東吾は髪を撫でながら聞いてきた。



「で?返事は?」

「・・・・ハイ・・・待って・・・ます」

「・・・ありがとう」


東吾は私を抱きしめながら、私の耳元で囁いた。



「誓いのキスしていい?っていうか、したい」


東吾の言葉に私は泣きながら笑ってしまった。

「ふふっ・・・東吾」

「沙羅、好きや」



そうして私たちは唇を重ねた。
空港での触れるようなものではなく、しっかりと想いを伝え合う様に、約束を刻み付けるように、唇を重ねた。

誰も居ない海での私たちの約束。
冬の海だけが証人だった。