意外な一言だった。
私自身はあの時言わなかった事は間違いではなかったと思っていたから。
東吾はゆっくりと話してくれた。

「あの時は、傍におられへんのに沙羅を俺に縛るんはアカンと思ったんや。俺自身にも沙羅に構う余裕がないと思ったし。せやけど、実際向こうへ行って、テニスばっかやってる毎日やのに、決まって思うんはお前の事だけやった。休憩の合間とか寝る前とか。決まって『沙羅は今頃なにしとんねんやろ』って。空見上げてそんなんばっかり考えとった」
「東吾・・・・」

東吾の言葉が私の胸を満たして涙が溢れてきた。
東吾も同じだったんだ。
お互いに続いてる空を見上げて相手を想っていたのだ。
想いが通じていたのだと思うと嬉しくて、切なくて、涙が溢れた。

東吾はそのまま話を続けた。

「でもな、そのうち不安になってきた。沙羅も環境変わって、もしかしたら他に好きなやつ、出来たかもしれん。いつも傍におってくれるやつ、好きになるかもしれへん、ってな。初めのうちは、それは仕方の無い事なんやからって思うとした。そのためにも、俺はお前の告白聞かへんかってんから」

東吾はそこで一旦言葉を切って、ぎゅっと強く私を抱きしめた。
そして、切なくなるような声で言った。

「でもな、あかんかった。沙羅が他の男と・・・って考えたら我慢できひんようになった。せやから、休み利用して無理矢理帰ってきたんや」

そう言うと東吾は腕の力を抜くと、私の身体をくるっと反転させ自分と向き合わせた。
私は泣き顔なんて見られたくなかったけど、東吾の真剣な眼を見た瞬間視線を逸らせなくなった。
東吾は私を見つめきっぱりと言った。





「俺は沙羅が好きや」




「東吾っ!」

聞きたかった言葉。
本当はずっと聞きたかった言葉を聞かされ、私はたまらず東吾の胸に飛び込んだ。
そして・・・・

私も許されるだろうか・・・
ずっと言いたかった言葉を
言ってもいいだろうか

そう思い、東吾の胸に縋り付くようにして言った。

「私もずっと・・・・ずっと東吾が好き!」

「沙羅ッ!」

東吾はぎゅっと私を抱きしめてくれた。
わたしも東吾の背中に腕を回してぎゅっと東吾を抱きしめた。