東吾と目線も合わさないまま時間が過ぎ、一通りの盛り上がりが過ぎた頃、誰かが言った。

「そういや藤堂と高宮って同じ部活やってんだって?」
「ああ・・・俺は高校でもテニス続けてるし、沙羅はそこでマネージャーをやってるが、それが?」
「やっぱお前らあやしいよ!本当にただの幼馴染か?!」

冷やかすようなその声に私はびくっと反応した。
東吾の前でそんな話、して欲しくない。
私はつい大声で言ってしまった。

「いい加減にしてよ!ほんとに景とはただの幼馴染なの!そんな事、あんた達知ってんでしょ?!」
「なにムキになってんだよ、高宮。そんなに否定すると余計に怪しいんだよな~」

尚もからかうようなその声に、もう一度口を開こうとした瞬間、東吾がすっと立ち上がった。

「ん?どうかした?田宮」

田宮の正面に座っていたクラスメートがそう問いかけた。
東吾はそれには答えず、俯いて叫んだ。

「もう限界や!」

東吾はそう言うと、いきなり私の手を掴んで引っ張った。
自然と私も立たされる。

「えっ?な・・・なに?」

困惑する私に答えず、東吾はそのまま歩き出した。

「え・・・ちょっと!・・・待って!何?!」
「ヒュー!田宮、強奪か?!」

私の声がみんなの冷やかす声にかき消される。
助けを求める様に振り向けば、由香が楽しそうに手を振りながら、口ぱくで私に伝えた。

(いってらっしゃい)

「『いってらっしゃい』じゃないわよ!ゆか~!!」

私の呼びかけも空しく、東吾は私を部屋から連れ出した。