空港で別れた時より一回りほど逞しくなっていたけど、ふわふわの髪も、微笑みも相変わらずだった。

「ふたりとも入り口で突っ立ってないで座ったら?ハイ、沙羅はこっち!」

由香が私の手をひいて東吾の隣に座らせた。
私は今の状況が飲み込めず、ただ呆然としていた。

「では、これで全員揃いましたね?それでは皆さん!新年あけましておめでとう!カンパーイ!!」

誰かの音頭で賑やかにパーティーがスタートした。
だけど私はとてもじゃないがパーティーを楽しむどころじゃなかった。

なんで・・・
どうして東吾がここにいるの?
いつ帰ってきたの?
テニスは?
スクールはどうしたの?
なんで帰ってくるって連絡くれなかったの?
私に連絡する必要なんてなかったって事?
『会いたい』と思い続けていたのは私だけ?

聞きたいこと、話したいことは山の様にあった。
だけどあんなに会いたいと思っていた東吾がすぐ傍にいて、私は東吾の気配を感じただけで涙が浮かんできそうになる。
だけど、みんながいる前で泣き顔なんて晒したくない。
ましてみんな楽しんでいるのに水を差すような事したくない。
私は俯いて一度ぐっと奥歯を噛み締めて涙を引っ込ませてから顔を上げた。

「由香!私お腹すいた!食べるものちょうだい!」

少し離れた席にいた由香にそう呼びかけた。
私の言葉に由香は呆れた顔をして答えた。

「あんたねぇ・・・。色気より食い気かい」

そこで由香は一瞬東吾をちらっと見た。
それは私に東吾との会話を促す目配せの様に感じた。
私は僅かに首を横に振った。

「はぁ・・・まぁいいけどね。腹が減ってはなんとやら・・・ってやつかね」

由香はそう言って私にポテトやサンドウィッチの乗った皿を回してくれた。

「サンキュー」

私は平静を装ってそう答え、友達との会話の輪に加わった。
だけど、東吾の顔を見ることは出来なかった。
見れば堪えている涙が溢れそうだったから。
そんな私の様子を見て麻衣がそっと私に耳打ちした。

「大丈夫?沙羅。驚かせてごめんね」

私はそれに微笑んで返した。