もう花火が終わろうかという頃になって、私は漸く顔を上げた。

「景、ありがと」

私は景が握っててくれた手を解き、ごしごしと目を擦った。

「もう大丈夫か?」

景が気遣わしげに私を見るので私は笑顔で答えた。

「うん!なんか思いっきり泣いたらすっきりした」
「そうか」

私の笑顔を見て、景もほっとした様に少し微笑んだ。
私は幼馴染とは言え、泣きじゃっくっているところを見られ少し恥ずかしくなった。

「あ・・っと私、ちょっと飲み物買ってくるわ」
「それなら俺が買ってくるから」
「いいの!景にお礼代わりにおごってあげるからここにいてね」

私は立ち上がりかけた景を引きとめ、一人河川敷を歩き始めた。


からんころんと下駄を鳴らしながら歩いていると、後ろから誰かが近づいてきて声を掛けてきた。

「高宮」

振り返るとそれは部長だった。

「あれ?部長も喉渇いたんですか?」
「いや、お前に少し話があって」

そう答える部長にいつもの様な笑顔はなく、雰囲気の違う部長に私は首を傾げた。

「なんですか?」
「高宮、おまえは本当に藤堂とつきあってないのか?」
「なんだ、部長が珍しく真剣な顔してるから何聞かれるのかと思ったら。だから、景とは幼馴染ってだけですよ」

部長の質問にははっと笑って答えたけど、部長は尚も真剣な眼差しをしていた。

「部長?どうしたんです・・・」
「なら、俺とつきあわないか?」
「はい?!」

私の言葉を遮って部長がとんでもない事を言ったので、私は思わず聞き返してしまった。

「だから、俺はお前が好きなんだ。つきあってくれ」
「あ・・・っと・・・・」

真剣な眼差しの部長の目に圧されて、私は言葉に詰まった。
でも、部長とおつきあいは出来ないと思い、思い切って口を開いた。