その後の田宮は別人の様なプレーを見せた。
いや、田宮本来のプレーに戻ったのだ。
最後は鮮やかなサービスエースで田宮は勝利し、続く景も勝利を収めたが、団体としての結果はダブルス2つとシングルスの1つを落としてしまい負けてしまった。

それは3年生部員の引退が決定した瞬間でもあった。

「今日で俺達3年は引退するが、今後も出来る限りのサポートはしていく。1年2年部員で来年こそは俺達の出来なかった関東制覇を成し遂げて欲しい」

景の凛とした声がコートに響いた。
後輩部員達はそれを涙しながら聞いていた。
景がどれほど部員達から慕われていたかよく分かった。
解散の声が掛かっても、誰もその場を去ろうとはせず、景をはじめ3年生部員をみんなで囲んでいた。

私も一言景に「お疲れ様」と言いたくて残っていたのだが、部員達に囲まれている景に声を掛けることが躊躇われ、後で電話でもしようと踵を返した。


試合は由香や麻衣も見に来ていたのだが、試合が終わった途端「あんたは景一君と一緒に帰るんでしょ」と言ってさっさと帰ってしまった。

仕方なくひとりで長く伸びる自分の影を踏むようにゆっくり歩いていると不意に私を呼ぶ声がした。