息を切らせて飛び込んだ空港の出発ロビーで、人ごみの中にその人を見つけた。

「田宮!」

家族らしき人と話していた田宮が私の声に驚いた表情で振り返った。

「沙羅ちゃん・・・・」

はぁはぁと肩で息をしながら田宮に近づいていった。
田宮もゆっくりと私に歩み寄ってきた。
田宮と向き合い、息を整え田宮を見た。

もうすぐ行ってしまう。
これが最後のチャンスだ。
言うなら今しかない。

そう思っても、胸が詰まってしまって言葉が出てこない。

「あ・・あの・・・田宮」
「なんで来たんや」

なんとか口を開こうとした私より先に田宮が先に言った。
そう言った田宮は困った顔をしながら顔を背けていた。

「見送りされたくなかったから今日にしたのに」

やっぱり迷惑だったんだ・・・・。

心を決めてここまで来たけど、やっぱり来てはいけなかったんだと少し後悔した。
でも、もうここまで来たら後にはひけない。
勇気を振り絞って言葉を繋いだ。

「・・・ごめん・・・迷惑掛けるつもりじゃなかったんだけど・・・どうしても言いたい事あったから・・・」

涙が零れそうで声が震えた。
でも、田宮の前で泣きたくなくて手のひらに爪が食い込む程手を握り締めて堪えた。
そして、ずっとずっと心の中で繰り返した想いを口にしようとした。

「ずっと・・・・ずっと田宮の事」
「沙羅ちゃん・・・待って」

私の言葉を遮り、田宮が待ったを掛けた。
だけど、私はこのまま言葉を止めたくなかった。
今しか言えないと思ったから。

「お願い、田宮。聞いて!」
「沙羅ちゃん・・・。それ以上は言わんといて」
「なんでよ!なんで言っちゃいけないの?!」

私の問いかけに田宮は顔を背けたまま何も答えず、私の話を聞こうとはしなかった。
私は泣きそうになりながらも言葉を続けた。

「私ね・・・田宮の事」
「沙羅ちゃん!」

田宮が私を制する様に名前を呼んだけど、私は構わず続けた。

「初めてテニスする姿見た時から」
「沙羅ちゃん!!」
「ずっと・・・ずっと・・・」
「沙羅っ!!」

すきと言おうとして、言葉を飲み込んでしまった。
突然、田宮が私を呼び抱きしめたからだ。

「え・・・ちょ・・・え?!」

訳の分からない私は田宮の腕の中でじたばたと暴れた。
それでも田宮は私を離さず、逆にぎゅっと抱きしめた。
そして田宮は私の髪に顔を埋めながら、ぼそっと言った。