「分からないか？俺はお前を好きだからさ」

驚いて目を瞠る私に景は近づき私の頬に触れた。

「意外だったか？俺はもうずっと沙羅だけを見てたんだが。全く気付いてなかったみたいだな」

そう言ってふっと微笑んだ景は愛おしげに私の頬を２，３度撫でた。
『愛情』を感じるその仕草に私は頬が熱くなるのを感じた。
景が言う「好き」は友達としてではなく、男としての「好き」なのだと理解した私は、自分も素直な気持ちを話さなければと思った。

「ごめん・・・景。私、全然気付かなかった。でも・・・私は景をそんな風に見た事ないから・・・」
「それはわかってるさ」

景は自嘲的に笑った。

「だから、これから俺の事をそういう目でも見てくれないか？お前が今、誰に心を動かされているかは分かってる。だけど、俺には可能性が全く無いのか？その事を考えて欲しい」
「・・・景・・・」

戸惑う私に景はいつもの様に私の頭をくしゃっと撫でた。

「突然悪かったな。返事が今すぐ欲しいわけじゃないから。ゆっくり考えて。沙羅がどんな答えを出しても俺たちが幼馴染という事実は変わらないから」

景の言葉に少しほっとした私は「うん」とだけ答え、再び歩き出した。