学校を出てしばらく歩いたところで景が私に言った。

「いつから沙羅は俺と帰りたがるようになったんだ?」

からかうような景の口調に私は顔をしかめた。

「景って嫌味言うの得意だよね」

私がそう言うと景はふっと薄く笑った。

「沙羅限定でな」

そう言ってから、景は真剣な顔になって言った。

「で?田宮と何があった?」

「・・・別に・・・なにも」

本当になにもないのだ。
何もないのに、田宮の態度が変わったのだ。
それに私が敏感に反応してしまった。
ただそれだけの事。

俯き歩く私に景はふぅっとため息を零し、私の腕を掴むと自分の方へと身体を向けた。

「なっ!・・・どうしたの?景?」

突然の景の行動に驚き景を見上げた。
景は私を見据え、静かに話し出した。

「沙羅、俺は今までお前とのこの関係に満足していた。友達と呼ぶほど遠慮する仲じゃない。恋人と呼べるほど近くにいるわけでもない。でも、間違いなく俺が一番お前のそばにいると思っていた。だからあえて俺はお前になにも言わなかった。沙羅、正直に答えてくれ。今、お前の心の中心にいるのは誰だ?」

景が今まで無いほどの真剣な眼をして私を見るから動揺して、私は景が何を言おうとしているか分からなかった。

「景・・・・どうしたの?なんでそんな事聞くの?」

不安げに見上げる私に景は少し苦笑しながら言った。