田宮は私と距離をとりたがってるんだ。


あの夏祭りの日以来、会うことも連絡する事も無かった。
なので、私には田宮がなぜ私と距離をおきたがる様になったか、分からなかった。

(そういえば、お祭りの時も最初は嫌そうだったもんな・・・・)

ネガティブな思考に陥り、とてもこのまま田宮とふたりで話し合いを続ける気分にはなれなかった。
なんとか今日はこの話し合いを終えようと、言葉をあれこれ探していると、生徒会の仕事をしていた景が教室に戻ってきた。

「あ!景。もう生徒会の方は終わった?」
「あぁ。今のところ、各クラスからの出し物が決まらないと何も出来ないからほとんど仕事がないんだ」

そう答えて景は自分の荷物をまとめだした。
私はいい突破口を見つけたと思い、田宮に言った。

「じゃあ田宮。後の詳しい事は私が考えておくから今日はもう終わろう」
「え?そんなん委員長が全部やるのと一緒やん。俺が言い出したのに丸々委員長に任せる事になってしまうやん」

私の言葉がかなり意外だったのか、田宮はようやく私の顔を見て言った。
でも言葉はやっぱり『委員長』で、その事がまた私の胸をチクンと刺激した。
私はこの場を逃げ出したい衝動に駆られていた。

「田宮は今日もテニスのレッスン、あるんでしょ?私も景と一緒に帰りたいから今日はもう終わりにしよう」

早口でそう告げて私は田宮の返事も聞かず席を立った。

「景、帰ろう」

そう声をかけ、私も自分の荷物をまとめた。

「沙羅、いいのか?」

景は私と田宮を見た。
私は背後に居る田宮を見る事ができず、ただ「うん」とだけ答えた。
手早くまとめた荷物を持ち、教室を出るとき田宮を見ずに声だけかけた。

「じゃあまた明日」

田宮からの返事は返って来なかった。