届かない心

夏休みが終わり、新学期が始まると学校中が1ヵ月後に開催される文化祭の準備のため慌しく毎日が過ぎていった。

我がクラスでは、田宮が「みんなで歌って踊って楽しもう!」と言い出しクラスのみんなが賛成した為、とにかくステージでの出し物に決定していた。
時間もないため、クラス委員の私と発案者の田宮で大まかな事は決める事になっていた。

「ねぇ、田宮。具体的にはどんな事するわけ?」

放課後、誰もいなくなった教室で私と田宮は窓際の席で話し合っていた。
田宮は椅子に横向きに座り、背中を窓に預けながら答えた。

「なんかみんなでわぁーって盛り上がりたいんやけど」
「・・・要は何にも考えてないわけね」

横向きのままあっけらかんと答える田宮に思わずため息が漏れた。
田宮に任せていたら何も決まらないと思い、私は考えついた事を話した。

「クラスを数グループに分けて、それぞれで歌いたい歌を決めて、衣装も作って、それを全校生徒に審査してもらうってのはどうかな」

私の話に田宮は目を輝かせて飛びついた。

「それいい!さすが委員長やな」

この田宮の答えに違和感を感じた。
正確には田宮と話をしだしてからすこしずつ感じていたが、今はっきりとこの違和感の訳を悟った。

2人で話をしているのに、田宮は私の方を向こうとはしなかった。
そして、私を名前では呼ばず『委員長』と呼ぶ。