急にドンという大きな音に驚き顔を上げると、バンという破裂音と共に夜空に花火が打ち上げられた。

「もう花火始まったみたいやな。沙羅ちゃん、このままここで立ち見でも大丈夫?」

周りを見れば、全ての人が足を止めその場で花火に釘付けになっていた。

「うん、大丈夫」

私がそう答えると、ふたりで夜空を見上げた。
次々と打ち上げられる花火に魅入られて、しばらくして私はふっと視線を田宮に移した。
花火を見上げている田宮の横顔は、観覧車の中で見た時より少しだけ幼く見えた。
花火を見ているせいかもしれない。

そんな田宮を見てふと思った。
来年の夏には、田宮とこうして花火を見ることなど決してないのだと。

(あと何度この横顔を見ることが出来るのだろう)


視線を花火に戻しても、その後私の見る花火は全て滲んで見えた。



そうして、私の中で田宮とのかけがえのない思い出がまたひとつ増えた。