俯き、ぎゅっと奥歯を噛み締めて必死で涙を堪え田宮に告げた。

「由香達が来ないなら私、帰るね。じゃあね、田宮」

そう言って田宮の顔も見ずに一歩踏み出した時、私の手を田宮がとった。

「待って、沙羅ちゃん」

いきなりの事で驚いた私は思わず田宮を振り返った。
田宮は真剣な眼差しをしたまま私を見ていた。

「せっかくやし、俺とお祭り行かへん?」
「え?・・・でも、田宮イヤなんじゃないの?」

思いがけないお誘いに嬉しさよりも疑問が沸いてきて正直に尋ねてしまった。
田宮はバツが悪そうに視線を背け答えた。

「イヤな訳ちゃうねん・・・なんちゅうか・・・・困るんや・・・・」
「何が困るの?」

訳が分からず聞き返すと、田宮は俯きぼそっと答えた。

「これ以上好きになったら困るんや・・・・」
「え?田宮・・・なんて?」

またも周りのざわめきにかき消され田宮の言葉が聞きとれなかった。
聞き返した私に今度は笑顔で田宮は答えた。

「沙羅ちゃんのかわいい浴衣姿を他の男共に見られるのが困るんや!」
「なによ、それ!」

田宮の笑顔につられ、私も笑うと自然と2人の足はお祭りの会場へと向かった。