どれくらいそのままいたのか分からなかったけど、我に返った私は進路調査票を担任に届け、約束していた由香の家に走った。
そこはすでに麻衣も来ていた。

「ちょっと沙羅、何やってたの?遅いじゃん」
「あぁ・・・うん・・・ごめん・・・」

私の様子がおかしい事に気付いたふたりは顔を見合わせ、麻衣が私の顔を覗きこみながら聞いてきた。

「沙羅、どうしたの?何かあった?」

心配げな麻衣の顔を見て、私はぽつっと言った。

「なんか・・・ちょっと混乱してて・・・」
「なに?どしたのよ?」

曖昧に答える私に由香が畳み掛けるように言った。

「なんか・・・・田宮が・・・・アメリカに行くって・・・・」
「「アメリカ?!」」

ふたりの声が見事にユニゾンを奏でた。

「なんでまたそんな事になったのよ?」
「中学卒業したらプロテニスプレーヤーになるために留学するんだって・・・」
「へぇ~」

私の説明に麻衣は驚き、由香は感心したように頷いた。

「ただのチャラチャラしたやつじゃなかったのね」
「・・・そうみたい」

由香の言葉にただ頷くしかなかった。