「大阪から来ました、田宮東吾です。よろしく!」

景とのゲームで見せた鋭い眼なんて微塵も感じさせず、翌日、田宮は朝のホームルームでそう自己紹介した。

(あぁ、だから大阪弁なのか・・・)

今更ながら、田宮の独特のイントネーションに納得していた。
教壇の横に立っていた田宮は、どこからか漏れた「結構かっこいいじゃん」という女子の言葉に「ありがとう」と言いながらにこにこ手を振っていた。

(やっぱり綿毛並みに軽いやつ)

やはり昨日こいつを見て感じた胸の高鳴りはなにかの間違いだったのだと、改めて確信していた。

田宮は教室に視線を巡らせ、私を捉えた瞬間「沙羅ちゃ~ん!」と手を振っていたが、私は何の反応もせず視線を逸らせた。

「あ・・・・フラレタ・・・・」

大げさに肩を落とした田宮にヒゲおやじは言った。

「失恋してるところ悪いが席に座ってくれ。先に進まん」
「はぁ。。。。先生、俺、傷心やから保健室行って寝てくるわ・・・・」
「田宮、1時間目の英語の先生はすっげーべっぴんさんだぞ?」
「まじで!?なんか俺、傷ついた心が癒された気ぃするから授業受けるわ!」

そう言って田宮は席に着いた。
教室はクスクスと笑い声が起こり、誰もが田宮を好意的に受け入れていた。