観覧車から降りた田宮はいつもの田宮に戻っていた。

「俺は心残りや~!沙羅ちゃんとお化け屋敷に入りたかったのに~!!」
「そんなにお化け屋敷が好きならひとりで行けば良かったのに」
「何で男ひとりでお化け屋敷入らなあかんねん。沙羅ちゃんは男心が分かってないな~」
「分かりたくもないわよ」

いつもの会話のテンポで話して電車に乗り込む。
電車は思ってた以上に混んでいた。

「沙羅ちゃんはそこに立っとき」

そう言って田宮は私の腕を引き、扉と座席の間に立たせた。
そうして田宮は私の前に立った。
自分が盾になって私のスペースを確保してくれたのだと気付き、なんだか照れくさくて俯いた。

その時

「うわっ!」
「きゃっ!」

電車が大きく揺れ、人がどっと私の方へと押し寄せた。
田宮はとっさに私の顔の横の壁に手をついて私が押しつぶされないようにかばってくれた。

「沙羅ちゃん、大丈夫か?」
「あ・・・・うん・・・大丈夫・・・・」

私の頭のすぐ上から田宮の声がする。
目の前には田宮の胸。
顔の両側には田宮の腕。
あまりに近すぎる距離に恥ずかしくてますます顔が上げれなかった。

(な・・・・なんか・・・・抱きしめられてるみたい・・・///)

私は電車が揺れても田宮の腕に寄りかからない様に、身体をぎゅっと小さくして、電車が止まるまで頑張って踏ん張っていた。