向かい合わせに座った私達は、自然と外に視線を向けた。
そこには赤い夕日が見えた。

「綺麗だね」

視線はそのままで私がぼつりと言った。

「ホンマ綺麗やな」

田宮も視線を夕日に向けたまま答えた。

さっきまであんなにはしゃいでいたのが嘘の様に、しばらくお互い何も言わずただ夕日を見ていた。
その沈黙を破ったのは田宮だった。

「今日は楽しかったわ。ありがとう。おかげでええ思い出出来たわ」

(いい思い出?)

その一言が気にかかり田宮を見た。
夕日に照らされた田宮の横顔は、今まで見たことも無いほど大人びていて、それでいてどこか淋しそうに見えた。

私はそんな田宮の顔を見て、言いたい事がいろいろ浮かんできた。



私も楽しかったよ。

誘ってくれてありがとう。

『いい思い出』ってどういう事?

なんでそんな淋しそうな顔してるの?



いろいろあるのに私の口から漏れたのは、ずっと私の心の中にあった疑問だった。

「なんで私をデートに誘ったの?」

田宮が答えるまでの間、私の心臓はまたドキンドキンと音を立てた。
田宮の答えを聞いたら、私は後悔するかもしれない。
それでも私は田宮の気持ちが知りたかった。

田宮は視線を外に向けたまま答えた。

「沙羅ちゃんとデートしたかったから」
「なんで私なの?」

私がそう言うと、田宮は私を見て答えた。




「なんでやろな」




そう言った田宮の顔がひどく切なげで今にも泣き出しそうだったから私はそれ以上田宮に何も聞けなくなった。




だけど、私はこの時の田宮の表情の訳をもう少し先で知ることになる。