東吾との出会いを記憶の中で辿りながら、冷たい風が吹き付ける海岸を景と歩いた。


東吾と出会って8年が過ぎた今。

しがないOLをしている私とは違い、医大生の景を私のわがままにつき合わせたことを今更ながらに申し訳なく思った。

「景、つきあってくれてありがとね」

素直な気持ちを口にすると、景は繋いでいた手を離し私の頭をくしゃっと撫でた。

「今更遠慮するな」

そう言って笑った景の顔は、やはりあの頃より少し大人になっていた。
でも、景のこの頭を撫でる癖は、中学の頃のままだ。

「変わらないね、景。私の頭撫でる癖。中学の頃はこの癖のおかげで、周りは私たちの事誤解してたよね」

懐かしい思い出を語るように切り出せば、景は海を見つめながら答えた。

「そうだな。あいつも最初は誤解してたしな」

私も、もう見えなくなってしまった花束を探すように海の彼方を見て答えた。

「そうだったね」

東吾と過ごした日々が記憶の中に次々と蘇った。