「たみ・・・・?」

私は中庭に出て、田宮の名前を呼ぼうとして途中でその言葉を飲み込んだ。
さっき見た時、田宮は一人だったが今は女の子と一緒にいた。

なにやら緊迫した雰囲気を感じ取り、とっさに私は木の陰に隠れた。

「私、田宮君の事好きなの!」

必死の女の子の声が私の耳にも届いてきた。
それを聞いた瞬間、私の胸はドキンドキンと音を立てた。

(田宮はなんて返事するの・・・・?)

知りたいような知りたくないような・・・・。
でも今更この木の陰から出られず、私はそのまま息を殺して身を隠した。

「ありがとう・・・けど、ごめん。俺、今はだれともつきあう気はないねん」

田宮の答えを聞いた瞬間、私はハンマーで頭を殴られた様なショックを受けた。

誰ともつきあう気はない・・・・・・。

それは私とも・・・・って事だよね・・・・。

私、少し自惚れてたのかも・・・・。

田宮にデートに誘われて「もしかして、田宮も私の事少しは気に入ってくれてるのかも」とか思ってた。
よく考えれば、私は田宮に冷たい態度しかとってないのに、気に入られる要素などどこにあるのか。

うろたえる私を見てからかってデートに誘ったのだと、初めて気が付いた。