「そんな事ないよ!私はもちろん、みんなも東吾の事、ずっと気にしてた!」
「うん・・・それは由香ちゃんに会ってよう分かった」

そう言ってふっと東吾は微笑み、話を続けた。

「親なんかな『もう二度とアメリカには行かさん』いうてパスポート取り上げんねんで。俺はかなりの親不孝してたんやな。結局俺は自分で自分の居場所をなくしてたんやな」

そこまで言うと東吾は私と向き合うように立って、しっかりと私を見ながら言った。

「沙羅、俺は戻ってきてもええか?また沙羅の隣におってもええか?」

緊張したように真剣な眼差しの東吾に微笑みかけながら言った。

「さっき言ったでしょ?『おかえり』って」
「沙羅」

そうして私たちはお互いを抱きしめた。
やっとお互い素直な気持ちで向き合っていた。
そして、腕の力を緩めた東吾が私の頬に触れながら言った。

「好きや、沙羅。ここで出会ってからずっと。あの頃よりもっと、お前が好きや」
「とうご・・・」

面と向かってそう言われると、また涙が浮かんできた。
『私も好き』と言いたいのに、胸がいっぱいで言葉にならなかった。
そんな私に東吾は表情を緩めて言った。

「やっぱり沙羅は泣き虫になったな」
「だれのせいでこうなってると思ってんのよ」

私は泣きながら笑っていた。
東吾は私の頭をヨシヨシと撫でて言った。

「これからはひとりで泣かせへんから」
「まだ泣かせる気?」
「う~ん・・『もう泣かせへん』とは言い切れんなぁ」

おどけて答える東吾に私はふふっと笑った。
そして東吾は私の頬をそっと包むと唇を重ねた。

懐かしくて、暖かくて、そして少しだけ切ないキスを私は目を閉じて受け入れた。