「沙羅・・・沙羅。起きろよ。こんなとこで寝てると風邪ひくぞ」

景に揺り起こされ、私は目を覚ました。

「あぁ・・・ごめん・・・寝ちゃってた・・・・今何時?」
「10時過ぎだ」
「そっか・・・帰んなきゃ・・・」

けだるい身体を起しても、私の頭の中はまだぼけっとしていた。
目の前にある景の顔をぼーっと見ていると、突然景が意味不明な事を言った。

「沙羅、俺を誘ってるのか?」
「はぁ?!なんでそうなるの?!」

一気に頭が覚醒してそう言った瞬間、私は抱きしめられていた。

「赤い顔で気だるい表情して見つめられて平静でいられるほど、今の俺は理性が効かない。今日は泊まっていけよ」
「えっ?あの・・景、ちょっと待っ」
「待たない」

そう言うと景は少し身体を離して私を見つめた。
それは幼馴染みの景ではなく「男」の顔をした景がいた。
景はそっと私の髪に両手を差し込み、優しく私の頭を拘束しながら言った。

「この前、お前はケジメをつけさせて欲しいと言った。そしてあの海に行った。ならもういいはずだろ?俺はもう待たない」
「でも景!私は・・」
「もう黙れ」

私の言葉を遮り、景は唇を重ねてきた。
うぐっと言葉を飲み込みながらも、私は景のキスを受け入れた。

景の言うとおり、私はケジメをつけに行ったのだ。
たとえそこに東吾が現れたとしても、
私の好きだった東吾はもういないのだから。