空白の7年

「なんで・・・・東吾・・・だよね・・・?」


あの頃よりずっと背も高くなって、顔もシャープになっていたけど、たんぽぽみたいなふわふわの髪はそのままだった。
目の前にいるのが信じられなくて、震える声で恐る恐る聞いた。

「そうやな。間違いなく俺や」

東吾は両手をポケットに突っ込んでふっと自嘲的に笑った。
私はその瞬間、地面を蹴って東吾に駆け寄った。
海を向いていた身体を自分の方に向け、どんっと東吾の胸を叩いた。

「なんで?!今までどこにいたの?!なんで連絡ひとつもくれなかったのよ!どれだけ心配したと思ってるのよ!!どれだけ・・・・どれだけ会いたいと叫んだと思ってるのよっ!!!」

私は泣きながら東吾の胸を拳で叩いていた。
信じられない出来事に自分の感情が爆発しそうだった。
そんな私の手を東吾が掴んだ。
見上げると、東吾が目を細めて私を見ていた。
私は少しだけ気持ちを落ち着かせ呟いた。

「生きてたんだね・・・・よかった・・・・」
「沙羅・・・」

柔らかく名前を呼ぶその声が私の心にすぅっと入り込んできた。
間違いない。
東吾だ。
ずっと会いたいと
もう会えないと思っていた東吾だ。

私が泣き崩れそうになった瞬間、景がばっと背後から私の身体を東吾から離した。

「お前、どういうつもりだ?今頃俺たちの前に現れて。今更、沙羅を迎えに来たとか言うんじゃないだろうな?!」

景が鋭く硬い声で東吾を問い詰めようとした。
私は景をなだめようと声をかけた。

「景、やめてよ。今は・・・東吾が無事だったのが分かっただけで・・・」
「そんなつもりはない」

私の言葉を遮って東吾が言った。
再び東吾を見ると、東吾は無表情で言った。

「沙羅を迎えに来た訳ちゃう。7年も放っておいて、俺も今更そんな虫のいい話するつもりはない」
「東吾・・・・」

迎えに来た訳じゃない・・・。

東吾の言葉が胸に突き刺さった。
心臓が動くたび胸がズキン、ズキンと痛んだ。