触れるだけのキスを何度か繰り返し、景が一瞬離れて私を見つめた。
熱っぽく、男の眼をした景に胸を高鳴らせていると、すぐにまた景が今度は強引に唇を重ねてきた。
その食らいつく様なキスに私が驚いた瞬間、景の舌先が私の口内に侵入してきた。

「うっ・・・ふっ・・・」

こんなキスの経験のない私は息苦しくて曇った息を漏らした。
それでも景の舌は口内を動き回り私の舌を絡めとると、私の身体をソファーに押し倒した。
さすがに私は慌てて景の身体を押し返して言った。

「待って!ちょっと待って!景!」

景は切なげに目を細めて私を見ながらも、身体を離してくれた。
私は息苦しくて、はぁはぁと息を整えてから景に言った。

「ごめん。まだ・・その・・景と・・・・出来ない・・・」

私がそう言うと、景の気まずそうに視線を逸らせて言った。

「俺の方こそ悪かった。やっと沙羅を手にいれたのかと思うと箍が外れてしまった」
「違うの。景が悪いんじゃない」

自分を責めようとする景に私はふるふると頭を振った。

「私だってもう子供じゃない。つきあうって事がどういう事なのか分かってる。だけど・・・けじめをつけさせて欲しいの」
「けじめ?」

私の言葉に景が首を傾げた。

「自分の気持ちにケリをつけたい。私、まだ東吾にさよならも言えてないの。まだ忘れる事は出来ないけど、でもちゃんと東吾にお別れを言ってから景とつきあいたい」
「沙羅・・・」
「だめかな?」

自分が言いたい事がちゃんと景に伝わってるか不安で景を覗きこむ様に見た。
すると景は私の頭をくしゃっと撫でながら言った。

「お前らしいよ。いいよ。今まで待ったんだ。あと少し待つくらいなんて事ない」
「ありがとう、景」

景のいつもの仕草に私もほっと胸を撫で下ろした。