「俺が引き受けてやるよ。いつまでもあいつに縛られてる沙羅を俺が解放してやる。だから、俺とつきあって」
「景・・・」

景の腕をぎゅっと掴みながら考えていた。

私が辛いとき、傍にいて支えてくれた景。
自分以外の男の事で落ち込み、いつまでも引き摺る私を景はどんな気持ちでずっと見ていたのだろう。
その上、他の男が好きなままの私を受け入れると言う。

私はそっと景の胸を押し返し、身体を離した。
そして首を横に振った。

「優しすぎるよ、景。景ならもっと景だけを見てくれる人がいるでしょう?」
「俺にまだ片思いを続けろと言うのか?」
「そうじゃない。他にもっといっぱいいい子はいるでしょ?」
「これまでずっとお前だけを見てきて今更他を見ろと?」
「・・・・」
「それに・・・お前は俺がいなくて平気なのか?お前を支えてるのは俺だと思ってるのは俺の自惚れか?」
「自惚れじゃない。景がいなかったらきっと私・・・・」
「だったら、この先も俺がお前を支える。俺がそうしたい」

そう言って景は箱から指輪を取り出した。

「俺はまだ学生で一人前になるにはまだ何年かかかる。その間に沙羅が他の奴に取られるなんてごめんだ。だから、今から沙羅を予約しておく。これはその証だ。受け取って欲しい」

真摯な眼差しで見つめられ、私の心は揺れていた。
東吾以上に好きになる人なんてこれから先現れないと思ってる。
だけどこの先ずっと東吾との思い出だけで過ごして行けるほど、私は強くない。
辛いとき、そばに居てくれた景。
これから先も傍にいて欲しいと思う。

「景・・・本当にいいの?私でいいの?景の優しさに甘えっぱなしの私で・・・」

私がそう言うと、景は私の左手を持ち上げ、薬指に指輪をはめた。

「沙羅しか甘えて欲しくない。沙羅しかいらない」

景が言葉と共に私をぎゅっと抱きしめた。
その力強さが景の想いの強さを物語っていた。

景の想いに答えたい。

私の心がひとつの答えを出した。
私は景の胸におでこをくっつけて答えた。

「景・・・ありがとう。指輪、大切にする」

私がそう答えると、景は腕の力を弱めて私を見た。

「沙羅、やっとつかまえた」

そう言って景は顔を傾けて近づいた。
私はそれを目を瞑って受け入れた。