まぼろし



あれから7年の月日が流れた。

私は短大を出てOLとして働き、景は家を継ぐため医大に通っている。
麻衣と由香もそれぞれ就職して働いているが、今でもたまに会ってはおしゃべりに華を咲かす。
そんな私の日常に、やはり東吾の存在は無かった。
ただ私の心の中に『思い出』として存在し続けるだけだった。

この7年の間に、交際を申し込まれた事が何度もあったが、私はその度に思ってしまう。
東吾以上に好きになれる人は現れない、と。
いつだったか。
いつまでたっても彼氏を作らない私に由香が呆れながら言っていた。

「もてるくせに彼氏のいないアンタと、同じくもてるけど彼女を作らない景一くん。あんた達、どこまで仲がいいのよ。さっさとくっついて周りで騒いでるやつらに引導渡してやんなさいよ」
「なんで私は『いない』で景は『作らない』なのよ」
「細かい事突っ込むのね。いつからそんな小姑みたいな事言うようになったのよ。さてはお局候補?」
「その冗談笑えないわ・・・」

そんな事を言って笑った事があった。
確かに景は今も変わらず私の傍にいてくれている。
だけど、景からはなんの愛情の欠片も見えない。

幼馴染み

このポジションから踏み込んだ関係ではなかった。