そんなこと、考えもしなかった…。



「フランスの事務所から声かけてもらったじゃん?自分の実力っての、試してみたくなって」

「家は…?」

「留学期間は学校が探してくれるホームステイ先でお世話になれるんだ」

「そうか…」

「でもね、僕が帰ってくる場所は…」

「ここに決まってんだろ。誰が買った家だよ」

「……ありがとう、澪王さん」



ホッとしたように笑ったユウリは、不安だったのかもしれない。



誰にも相談しないで、自分で出した答え。



ユウリは今、大人になるために必死なんだ…。



「正直、迷ってるんだけどね?社長は移籍はさせないって言うし、僕もフランスの事務所に移るってのはちょっと将来的に不安だし」

「リンリンには言ったのか?」

「う~ん、さっき言ったよ…」

「泣かれたわけね」

「僕はどうしたらいいかな?セリちゃんを泣かせてまで、自分のやりたいこと、やってもいいのかなって…」

「それがお前の将来に必要なことなら、俺はやるべきだと思うぞ」


ユウリの人生だ。