俺の車で俺の運転。



ご機嫌のシュリは勝手に音楽をかけて、大声で歌いまくる。



やっぱりうめぇし…。



「お前、マジで歌う気ねぇの?」

「なんで?」

「プロ並みにうまいだろ」

「耳で聞いたのを歌ってるだけで、自分でアレンジしろとか言われてもムリだもん」

「なるほど…」



日本人離れした歌唱力に、なんだか負けた気がした。



俺も精進せねば…。



「澪王の歌は好きだよ」

「どーも…」

「犯罪級にいい声。澪王がミュージシャンじゃなきゃ、あたしが独り占めできたのにね」



純粋に嬉しかった。



歌い方が好きとか、声が最高とか。



ファンに言われても、どこか人事に感じていたのに。



シュリにそう言われて、なぜか心に響いた。



そうか、シュリはずっと本音しか言わなかったから。



建前じゃなく、本当の感想ってのを初めて聞いたのかもしれない。



「歌は俺の全部だ。ヤバいくらい、歌うのが好き」

「いいじゃん、それ」



初めて言った言葉だった。