そんな澪王にいいようにされて、目が覚めたらお昼だった。
昨日の後半は記憶がない。
裸の澪王が隣にいて、妙な脱力感に襲われた。
シャワー浴びたい…。
「起きんのか…?」
「シャワー浴びて来る」
「そのままの格好で行くなよ?」
「ん」
落ちていた澪王のTシャツを着て、パジャマ代わりのショートパンツを履いた。
自分の部屋へ行き、着替えを持ってリビング。
ユウリがいないのは、学校に行った証拠。
あたしが起きてこない時は先に行くユウリ。
無断欠席しちゃったな~。
今から午後の授業出ようか迷う…。
頭は悪くないけど出席日数は微妙だ。
引きこもったりしちゃったからな~…。
まぁ、今日くらいいいや。
そう思ってシャワーをゆっくり浴びた。
お風呂から出たら、寝起きっぽいリキとアツシに遭遇。
「よぉ、チビ。風呂か?」
「うっせぇ、おっさん」
「残念ながら澪王とタメだから~」
「あっそ」
「風呂入るからどけろ」
「ならついでに掃除もよろしく~」
「超生意気…」
さっぱりしたぁ~。
アツシがソファーに座り、タバコに火をつけた。
あたしは冷蔵庫から水を出してゴクゴク。
「ぷはぁ~!!うっま~」
「シュリちゃんってホント、素で生きてるね」
「誰かに媚びるのとかやり方知らないし、自分を偽る方法も知らないだけだよ」
「そういう人間って少ないから貴重だね~」
「そうかもね~。あっ!!この前お家行ったよ!!」
「知ってるよ。俺は気を利かせてホテルに泊まったけど」
「超キレイで超広かった!!アツシってセレブ!!」
「ははっ!!いちばん稼いでるのはお宅の旦那だよ~」
そうなの?
澪王がいちばんお金持ち?
そうは見えないけど…。
アツシんちの方が豪華だったもん。
「澪王って庶民的…」
「実家、あんなに金持ちなのにな。なぜか贅沢しねぇんだよ、澪王は」
なんでだろ。
飽きたのかな?
「欲しいモノがあれば俺だって買うっつーの…」
「澪王っ!!おはよ!!」
「ん~…、シャンプーの匂い…」
ギュウゥゥゥゥ!!
四六時中くっついてたい。
もっと抱きしめて~!!
「イチャイチャしてんじゃねぇよ…」
「最近シュリ様がご機嫌だから甘やかしてやってるだけだろ」
「お前らはバカップルかっ!!」
そうだったの?
あたし、ご機嫌なの?
「アツシはセイナとラブラブ?」
「俺らは付き合い長いし。そういうアホみたいなベタベタはしねぇの」
「時間なんか関係ないじゃん!!澪王がくっついちゃダメって言ったら、嫌いになるもん」
「シュリちゃんらしいよ。澪王は異常だけど」
そうなのか…。
澪王って実はドライな人?
「シュリ、水くれ」
「飲みかけでいいならあげる」
「ん」
あたしが飲んでたお水を全部飲んじゃった澪王。
昨日のお酒は抜けたのかな?
「まだ酔ってる?」
「酔ってねぇよ。俺は後半飲んでねぇし」
「ならシュリちゃんに甘えたいのか?」
「いやいや、俺はベッドで甘えさせてもらったんで」
「澪王ちゃんエッチ~!!」
って会話をアツシに白い目で見られた。
それから起きた駿太郎と共に全員が仕事へ向かい、夕方に帰ってきたユウリ。
「リムくんが寂しがってたよ」
「意味わからん。リムのために学校行ってるんじゃないし」
「明日はサボっちゃダメだよ?出席日数ヤバいんだから」
「わかってます」
「ん、よろしい」
次の仕事がテスト前で、ちょっとだけ焦る。
追試とか補習になって休みの日まで学校なんか行きたくないし。
「勉強しよう…」
「一緒にやろっか。僕が数学教えるから、シュリが古典教えてよ」
「うん、いいよ」
苦手なとこはふたりで補う。
ずっとこうして助け合ってきたスタイルは今も変わらない。
「最近楽しいね~」
「そうだね。シュリがいっぱい笑うようになって、僕も楽しいよ」
「澪王も好きだけど、ユウリも大好き~」
「じゃ、ご飯食べたら頑張りますか!!」
平凡で幸せな日々。
こうやってずっと笑っていられたら、人生が楽しいんだと思う。
平和って、なんだか超ステキ!!
【澪王】
久しぶりに親父から電話が来た。
「そろそろ双子ちゃんたちの誕生日だろう?アイツも帰国することだし、うちでパーティでもしようか」
アイツらが喜びそうなので、その話を進めた。
俺の仕事が楽な時と、双子のテストが終わってから。
誕生日当日はユウリもリンリンと過ごすかもしれないので、さすがにそれは避けて。
まぁ、俺は仕事だからシュリが拗ねるのなんて目に見えてますけどね。
「ってことで、この日、俺の実家にご招待だ」
「「噂の豪邸!!」」
「まぁ…そうだな…」
「「真王さんち!!」」
「ちなみに、丁度弟も帰ってくる」
キラキラの目をした双子。
とにかく嬉しそうで、なんだか俺も嬉しくなった。
「ねぇねぇ、なに着て行けばいい!?」
「適当でいいだろ…」
「もらった服で着てないの、いっぱいあるよ!!」
浮かれたシュリの服選び。
デザイナーに気に入られてるらしい双子は、とにかく服をもらうらしい。
しかも、ふたりとも体型にピッタリの特注。
俺が欲しいくらいだ…。
シュリなんか靴も何足か作ってもらったらしくて、小さな足に高いヒールばっかり。
それを部屋で履くというアホな行動。
「コラ、靴は外で履け」
「澪王、ここもアツシんちみたいに土足OKにしようよ~」
「アイツんちは床が違うわけ!!俺んちはフローリング!!」
「お金持ちなんでしょ?床、張り替えなよ」
やっぱりシュリは相当なワガママっ子だ。
さすがシュリ、言うことがぶっ飛んでる。
「澪王さんの弟さんはどんな人?」
「ん~?どんな…マジメ?ユウリと気が合うかもな」
「楽しみだなぁ~」
ユウリも根はマジメだし。
似てるとことかあるかも。
俺もアイツに会うの、1年ぶりか?
俺が実家に滅多に帰らねぇから、母親に会うのも久しぶり。
そういや、シュリとのこと、何にも言ってねぇな…。
まぁ、反対はされないと思うけど。
そんなシュリとユウリが仕事をした成果が出た。
大人向けのファッション雑誌で、少しばかり高いヤツにデッカく。
双子の専属ブランドが20代~40代に人気で。
それを10代の美形双子がビシッと宣伝しちゃってるわけ。
シュリは人形みたいで、ガキっぽいというより、マネキンが服をキレイに着こなしてるみたいだ。
一方ユウリは10代を感じさせない妖艶さがあって、顔もキレイなのでめちゃくちゃスマートでカッコイイ。
ふたりとも別人だ…。
「お前ら、本当は普通のガキなのにな…」
「「うん」」
雑誌で見るとかなり高級な双子に見える。
コレはシュリとの関係を益々世間には言えなくなりそうな予感…。
それでなくとも俺は週刊誌の常連なのに。
最近おとなしくしすぎてるせいで、そろそろ狙われそうだし…。
双子がここに住んでるのがバレたら、どうなっちゃうんだ…?
親代わりは親父だとしても…。
美形双子を飼ってるなんて言われた日にはさすがに恥ずかしくて外に出れる気がしない!!
なので、社長に相談してみた。
「バレたらねぇ~…」
「手を打つなら早い方がいいっスよね…」
「やましいことがないなら保護者代わりでいいんだけど。やましすぎる関係ですものね~」
「…………」
「うちのシュリ、傷物にしてくれちゃって」
「いやいや、最初にアイツらジャケットに使ったのは俺ですから…」
「お黙り。そうねぇ~…寮に入るつもりは…シュリにはないわよね~…」
寮か。
ひとり暮らし用のマンションがあったっけ。
でもアイツ、そんなとこに行ってもひとりで生活できねぇだろ…。
「前に私の養子にしようとしたら断られちゃったのよねぇ~…」
「マジスか!?」
「えぇ、失恋した気分だったわよ」
「そんなこと俺にはひとことも…」
「居心地がいいんでしょ、あなたのところが」
俺も手放したくはないんだけど。
バレるのは時間の問題だとは思う。
そこで、引っ越すことを考えた。
マンションなら同じマンションに住んでるで誤魔化せる。
今の一戸建てはリスクが高い。
って、何で俺、アイツらのために引っ越しまで考えてんだろ…。
要するに、俺も双子とは離れたくないらしい。
なのですぐに住居探し。
高校から近くて、今の家も近いとこ。
「もしもし?親父?」
「澪王から電話なんてめずらしい」
「今の家から比較的近いマンション、どっか空きねぇ?」
「建設中のマンションがあるけど、売れてないのは最上階しかないな」
「それ買うから。いくら?」
「12億」
「あっ、ローンとかできますかね…?ってか高すぎんだろ!!ボッタクリ!?」
「ワンフロアの半分、内装は買ったら自由に設計。高すぎて買い手がいなくてね。澪王の稼ぎじゃ無理だよ」
「そんなことっ!!ねぇよ…?」
「澪王、それは双子ちゃんと住むため?」
「ん、今のままだとアイツらの人生にキズ付けちまいそうだから早めに引っ越そうかと思って」
「大人になったね、澪王」
そうか?