アイツに会いたい。
あって確かめたい。
そう思う気持ちが強くなった。
車は高級住宅街へと入っていく。
高い塀に囲まれた一角、親父は車を一旦止めた。
周囲には、何処からききつけたのかすでにマスコミらしい人たちが集まって来ていた。
「廣瀬睦樹です。
開門お願いします」
携帯で何処かに電話をして、告げると巨大な壁の一角がゆっくりと動き出して奥の敷地に入れるように開いた。
その中へ車を入り込ませていく。
止められた親父の車のドアをゆっくりとお辞儀をして制服姿の人が開いていく。
「睦樹さま、咲空良さま」
そうやって親父たちに親しそうに話しかけてくるのはメイド服を着た年輩女性。
「ご無沙汰しています。
知可子さん、妹のところに案内してくれますか?」
震える声で咲空良さんは告げると知可子さんと呼ばれたその人は、
表情を仕事用に切り替えて、深々とお辞儀をした。
「ご案内いたします」
知可子さんに連れられて入った建物の中。
親族らしい人が集まってきているエントランス。
そんな人混みを掻き分けて、
階段をのぼって案内された一室。
棺の中に眠るように安置された少年。
その少年は、伊吹に似ていたけど伊吹とは違う別人だった。
その現実に正直ほっとするオレが居る。
竣祐さん、伊吹じゃないじゃん。
亡くなったの驚かすなよ。
内心、毒づくものの視線は、
生意気なアイツの姿を一目確認したくて追い続ける。
部屋の中には咲空良さん姉妹とオレ。
そして親父。
そして眠り続ける、棺の中の少年。
秘密を知るものばかり。
「……葵桜秋……」
咲空良さんは妹だと話してた、
そのそっくりな人の方へと近づいて、
ゆっくりと抱きしめた。
少年の傍で、お地蔵さんのように固まって、
動くことをしないその人は消え入るように小さな声で呟く。